防食工事

防食工事とは?

防食工事とはどのようなものなのか? コンクリート防液堤の防食工事を例に説明いたします。

防液堤とは、万一、設備・装置から油や薬品等が漏れ出した際に、その設備、装置以外の箇所に漏れ出て行ってしまうことを防止する為のフェンスの役割をする堤です。
ただし、長期間経つと、この防液堤自体も水や油、薬品により劣化してしまいます。そこで、こうした劣化を防ぐ為に、FRPと呼ばれる油や薬品に対して強いプラスチックの膜をコンクリートの表面に貼付施工することにします。 このビニルエステル樹脂は、硬化剤と呼ばれる薬品を混ぜることで、30~60分で、高粘性のスラリー状(水飴状)から、固体へと変化します。

固まるまでは水飴状なので、水平面、立ち面、狭い、細かいところでも、塗る箇所に合わせた形状に固めることができます。

それではFRPをコンクリートに接着する準備をします。 コンクリートの表面は、表面よりごく浅いところで非常に密なので、水飴状の樹脂が染みこみにくくなっています。
樹脂が染みこまなければ、コンクリートと樹脂との接着は充分ではなくなってしまい、長期間、樹脂とコンクリートとが接着していられなくなる恐れがあるのです。

そこで左写真の様にコンクリートの表面をポリッシャーと呼ばれる研磨機を用いて、表面の密な部分を削り取ります。ポリッシャーの先は研磨用のサンドペーパーが回転するような構造になっていて、ちょうど掃除機を掛けるのと同じような要領でコンクリートを研磨することができます。 
 
もしも、コンクリートの密な部分が深く、もしくは硬くてポリッシャーでは研磨できない場合は、サンドペーパーではなく金属の刃が付いた研磨機を使うこともあります。

ポリッシャー掛けは、だいたい1㎡当り十数から二十数秒くらいで行います。この現場の場合は、約40分程でコンクリートの研磨は終了することができました。 こうしてコンクリートの表面に樹脂が染みこみやすくした後は、コンクリートの研磨で出た粉やゴミを掃除機で吸い取り、次の工程であるプライマーの塗布へ移ります。 
コンクリートに水飴状の樹脂をくっつけるには、直接水飴状の樹脂をコンクリートに塗るのも無理ではないのですが、より一層接着を良くするために、コンクリートに樹脂を塗る前にプライマーと呼ばれる樹脂の一種である、のりを塗るのが効果的です。

FRP用の樹脂が水あめ状であるのに対して、プライマー用の樹脂は水くらいサラサラです。サラサラなのでコンクリートに浸透しやすく、コンクリートに浸透しながら固まっていきます。 
プライマーは、接着したいものに合わせて種類を選ぶのが一般的です。 今回は、コンクリートに良くくっつき、FRP用の樹脂とも良く接着する1液ウレタンプライマーを選びました。 
 
 
このプライマーは、空気中の水分と反応して固まります。 
上部左写真のようにローラーを用いてコンクリート表面に塗ると、通常15~25℃程度で、60~90分で固まり、乾燥します。写真の茶色くなった部分がプライマーを塗った箇所です。プライマー塗りは、1㎡当り二十数から三十数秒くらいで行います。約40分程でプライマー塗りは終了し、更に60分で乾燥しました。 
乾燥後は、次工程であるFRPの膜を作る過程に進みます。 
まず、左写真のようにFRP用の樹脂を使ってガラスマットを防液堤の立ち面に貼り付けます。 
水あめ状の樹脂をローラーに付け、ローラーをガラスマット上で転がすことで樹脂をガラスマットに塗りつけてゆきます。 
 
FRPの利点は、平場はもちろんのこと、写真のような立ち面でも、ガラスマットが貼り付けられるところならどこでも施工できるところです。 
でも、ここで一つ疑問が浮かびます。凹凸な場所にガラスマットを貼り付けても凹凸の隙間が空いてしまって、FRPとコンクリートとの間に空気が入ったままになってしまったりはしないでしょうか?また、凹凸部にFRPを貼り付けてFRP自体が凸凹になってしまったりしないでしょうか。 
しかし、大丈夫。こんな時は、右写真を見てください。これは、防液堤のコンクリートを打ち継いだ時の継ぎ目です。ここにもFRPを施工しようとしていますが、凹凸があります。

そこで、凹凸部をパテと呼ばれる状態にした樹脂をコテで塗りつけていきます。パテは、ちょうどマヨネーズ状にした樹脂で写真では、ピンク色に見えているものです。マヨネーズ状ですので、穴や空間を埋めやすくなっています。これを凹んだ部分に塗りつけ、凹みを埋めて平滑にします。 
このような工夫で凹みがあっても平らにガラスマットを貼付けて固めることで、平滑なFRPを形成することができるのです。 
 
平場についても上部写真2つのように同様に行います。 この樹脂は、樹脂に有機過酸化物と呼ばれる薬品を樹脂の重量の1%だけ加えることで固まります。通常15~25℃程度ですと、40~60分で固まります。写真の茶色くなった部分が樹脂を塗った箇所です。樹脂の塗りつけは、だいたい1㎡当り数分で行います。 
今回は、1日目は、約120分程で樹脂の塗りつけは終了、二日目も約120分程で終了し、おのおの塗布時間とは別に塗布60分後には乾燥しました。 
 
こうしてコンクリート全体をFRPの膜で覆うことができました。 乾燥後は、次工程であるFRPにトップコートと呼ばれる化粧を施す過程に進みます。 FRPだけでも耐食性は充分ですが、トップコートで補いたい点が2つあります。

一つ目は、FRP層の表面に樹脂が固まった後に残ってしまう、ガラスマット表面のザラザラ模様を隠して平滑にすることです。 
 
二つ目は、樹脂だけからなるトップコートを塗ることでガラスマットと樹脂からなるFRPへの薬液等の影響を軽減することができる点です。 
 
トップコートは、FRP層と同じ樹脂を用いて、同じ方法で固めます。FRP層と異なる点は、化粧という役割をもたせるために色を付けるところです。

通常、トナーと呼ばれるトップコートに着色したい色の顔料と樹脂とのハチミツ状の混ぜ物を着色したい樹脂の5~10%だけ樹脂にまぜることで好みの色を付けることができます。

左写真の緑色になった部分がトップコート用の樹脂を塗った箇所です。樹脂の塗りつけは、だいたい1㎡当り数分で行います。今回は、約120分程で樹脂の塗りつけは終了し、更に塗装後60分で乾燥しました。 
 
こうすることで防液堤全体を緑色のFRPの膜で覆うことができました。

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